神奈川県の農業改革。今、県が中心となって推進させなければ手遅れになる

神奈川県の農業改革。今、県が中心となって推進させなければ手遅れになる

ウクライナとロシアの戦争の影響により、野菜や果物の価格が高騰しました。
戦争が起こっただけで、食物だけでなく、機械部品なども手に入りにくくなることを実感された方も多いと思います。そして10年後は更に食料事情が悪化することは間違いありません。
日本の農業は自給自足率が低いので、危機に陥るのは明確です。日本の農産物自給率は年々減少傾向にあり、生産額ベースはまだ高い方ですが、カロリーベースではたった37%しかありません。
なぜそうなってしまったのか?その原因は間違った政策によるものです。職業バランスが悪いのです。昔は大工、左官、農家などの職人がたくさんいましたが、今はみんなネクタイを締めたサラリーマンになってししまっているのが現実です。
農業の場合は法改正により相続税が兄弟で平等になってしまいました。長男は家やお墓、そして田畑を守って来ましたが、父親が亡くなったら遺産は平等に分配されます。それでは農地を売って現金化したくもなります。田畑を売ってサラリーマンになってしまいます。
では私たちは今、10年後の食糧危機に陥らないために何をすべきなのでしょうか?そう自給自足率を上げる農業改革を行うべきなのです。

 

県の資料によると神奈川県は田んぼが約3,730ha、畑が約15,400haです。1反の田んぼからは約78俵の米が収穫できますが、九州や四国近畿地方では1反あたり700万円くらいの収穫を得ています。それは米ではなく農業改革をした結果のハウス栽培で育った果実です。
神奈川県では田畑の面積は減少傾向にあります。相続税の負担が大きく、手放してしまう農家が多いからです。
田畑を減らさないようにする為には、収益性のある農地に改革すればいいのです。米作りは新潟県等に任せて、神奈川県は野菜や果物の生産を強化すればいいと考えます。
1反あたり700万円の収入がある場合、経費を差し引いて手取りで500万円くらいは稼げます。
サラリーマンの平均年収よりも高いです。昔は早朝から夕方まで畑仕事をしていましたが、現代は技術進歩により、機械化が進んでいますから145時間程度の農作業で済みます。毎日残業して稼ぐサラリーマンよりも生産性が高いのです。稼げると分かれば脱サラして農業に従事する人も増えます。
最新技術を導入し、稼げる農業にして農業人口を増やす。都会でも稼げる農業に改革する必要があります。では誰がそれを指導するのか?それは県の職員以外にいません。

昭和の時代は農協が強い力を持っていました。農協には営農という部署があり、農家に指導やサポートをしていました。しかし現在の農協にはそのような部署はありません。あったとしても機能していません。農協は金融業になってしまったのですから。金融のノウハウは持っていても、営農のノウハウは持っていません。
では誰が農家に生産性を高める指導をするのか?それは神奈川県の農業政策を担う部署や専門知識を持つ職員しかおりません。
県の役割は大きく3つあります。1つはまずは農地を守ること。相続税対策でこれ以上売却させてはいけません。第2に最新技術を取り入れた農業を推進すること。つまり稼げる農家を作り出すことです。
そして最後に農業人口を増やすこと。農業から離れてしまった人を取り戻す、挑戦したい人に門戸を開くことです。

1反で500万売り上げられるビジネスモデルを作るのです。2反で1000万円です。地方ではこのモデルを確立している地域もあります。神奈川県に出来ないわけがないのです。地方と比較すると巨大な消費圏の東京がお隣に存在するのですから、輸送コストが安価に済むため利益率は更に上るはずです。
山梨はぶどうや桃が有名です。千葉は落花生やスイカ、埼玉はイチゴ、山形はさくらんぼ、沖縄のパパイヤや宮崎のマンゴー、これらの野菜がブランド化されるのは気候や風土が適しているからだとお思いでしょうか。それは違います県の職員がしっかりと指導に入っているからです。日本酒がおいしいエリアだって、農工大や東大あたりと共同研究を行っています。西湘エリアではみかんの栽培をしていますが、愛媛や伊予と比較して甘いと言えますか?市や町単位で職員が指導しているかもしれませんが、それには限界があります。
農業改革は県がもっと深く介入し、計画的に進めなければなりません。
例えば海外の野菜やフルーツを見つけて品種改良して、神奈川県で栽培するとします。これを市や町ができますか?県単位で大きく進めていかないと、改革ができないことも多いのです。

生産性向上で真っ先に浮かぶのはハウス栽培ですが、すべてをハウス栽培にするのではなく樹木にしても苗にしても気候に合うよう品種改良を重ねる、流通網を確立させるなど、新しい試みは県単位で動かないと効率が悪くなります。
県には産業・工業・商業を推進する部署もありますが、それは余計なお世話です。民間企業は職員が思っている以上に厳しい戦いを日々しているので、知識・知恵はよっぽど持っています。しかし農業は違います。組織化されていない農家は個々では戦っていけないので、大いなるサポートが必要なのです。
県がイニシアチブを取って、県内の市町村や政令指定都市と協力体制を築くべきなのです。
神奈川県は横浜市や川崎市の特別自治市化に反対していますが、各市は県が頼りないから独立したがっているのです。それはそうです県は市民を豊かにするノウハウを持っていないのですから。産業・工業・商業もダメ、自治運営もダメならもう農業しか残っていません。県は利権などという小さなことにこだわっていないで、未来の農業の活性という大きな視点から考え、農業改革を積極的に推進していただきたいと思います。
今若い方たちは非正規雇用の低賃金で疲弊しています。若い方たちに「農業っておもしろい」「農業で豊かな生活ができる」と思ってもらわないと、神奈川県の農業は衰退してしまいます。
それが10年後の食糧事情の悪化につながってしまうのです。
私は最低でも7080%の自給自足率は必要だと思っています。神奈川県でも多くの野菜や果物を調達できるしくみづくりが必要だと思っています。このままだと農家は「土地は売るもの」と考えてしまいます。
土地を売れば税収は上がるでしょう。しかしそれで雇用が生まれますか?地域の農業が活性化されますか?
確かに農業改革は地方と比較して神奈川県は遅れをとっています。しかし遅いことはありません。今からでも県民のため、そして若い方々のために農業改革が必要であります。